「どんなモンスターなんだろう」。そんな思いで臨んだ初めての接見では「普通の人」に見えた。ただ、9人もの殺害を「普通」に語る態度には違和感があった。
20年余りの弁護士人生で、大森顕さん(51)は120件以上の刑事弁護に携わってきた。接見時には泣き叫ぶ人や、言葉を発してくれない人もいる。
だが、2017年12月30日に接見した白石隆浩容疑者(呼称は当時)はその殺害方法、遺体の解体手順を明瞭かつ詳細に、そして淡々と語っていった。
そんな白石容疑者と、この日から約3年にわたって向き合うことになる。
弁護人解任を続けた容疑者の求めは…
事件が発覚したのはその2カ月前。神奈川県座間市のアパート一室で、15~26歳の男女9人の遺体が見つかった。遺体は解体され、一部はクーラーボックスに入れられていた。逮捕されたのが、この部屋の住人の白石容疑者だった。
当初から犯行を認めて事件の全容を詳しく供述した白石容疑者は、自分の意に沿わずに取り調べで黙秘を勧めるなどした2人の弁護人を相次いで解任した。
そんな中、弁護士会から国選弁護人になるよう要請を受けた大森さんは「腹をくくる気持ちで引き受けた」。黙秘することを拒み、「争点を作らないでほしい」と求めてきた白石容疑者に対し、「弁護人として何もしないまま、自分の被告人が死刑判決を言い渡されるのを法廷で聞くことはどうしてもできない」という思いを内に秘めて応対することにした。
開示された証拠は8千点
「検察が提出した証拠については無条件ですべて同意してほしい」。白石被告はそう語っていた。
極刑が予想される中、弁護を引き受けた大森さん。被告の要求とは反対に、死刑回避のための弁護活動を始めます。そして、決裂したまま裁判に突入していきました。
白石被告の場合、起訴された…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル